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日経お役立ちニュース No.27

投稿日:2017年5月18日 更新日:

良いものを安く買って、低い金利でローンを組んで、病気になったら病院へ行く。残業してダラダラ働き、経済成長はほどほどでいいと思う。そんな普通の日本人なら誰でも考えそうなことが、日本経済の成長の重石になっているのです。

 

記事の内容はお送りしたニュース再チェックの本文を読んでいただければお分かりいただけると思います。このメールではこれらのことが起きている背景を私なりに解説してみましょう。

 

これらの背景にあるのはバブル経済の崩壊、つまり1991年(平成3年)3月から1993年(平成5年)10月までの景気後退期の後遺症と少子高齢化による人口減少にあると考えられます。バブル崩壊により1973年(昭和48年)12月から続いた安定成長期は終わり、「失われた20年」と呼ばれる低成長期に突入しました。最近ではアベノミクスでも顕著な成長路線にのれなかったことから、「失われた25年」とも呼ばれています。

 

わが国は1955年(昭和30年)頃から高度経済成長期を迎えます。この際には「人口ボーナス」がありました。つまり人口が増加することで自然と国内市場が拡大していきます。日本の人口が減少を始めるのは2005年頃からです。それまでは少子高齢化していても総人口は増加していました。

 

今回の特集記事でとりあげられた「デフレ」「財政」「低金利」「働き方」「GDP」をバブル崩壊後遺症と少子高齢化の観点から考えたみましょう。

 

「デフレ」はまさにバブル崩壊の後遺症そのものです。それまでは上り続けると思われていた土地の値段が下がりました。保有資産の価値が下がった企業は投資を手控え、安全な経営を心がけます。当然、社員の給料は上りません。また、資産価値が下がった個人も消費を手控えます。「モノの値段は上るものだから少しでも早く買ったほうがよい」との考え方が「モノの値段はいずれ下がるのだから後で買ったほうがよい」に転換します。そして、「値段が下がったけれど、なくても困らなかったから買うのやめよう」となり、デフレや消費不況からなかなか抜け出せないのです。そして人口減少で消費する人そのものが減ってきています。国内消費市場はますます縮小していくのです。

 

「財政」の赤字が増えたのはバブル崩壊後の景気対策として数々の財政出動をしたことにその一因があります。しかし、景気を浮上させる効果はあまりなく、税収がなかなか増えません。さらに、高齢化の進展で医療費や社会保障費が膨らんできています。「社会保障と税の一体改革」といわれていますが、選挙結果を大きく左右する高齢者に厳しい改革はなかなか進みません。そして将来、労働人口はますます減少して税金を納める人が減り、受給を受ける高齢者が増加します。将来世代の負担はますます大きくなることが予想され、将来不安が解消されないことから消費も進みません。

 

「低金利」はバブル崩壊後の景気浮揚策として、1999年(平成11年)2月に日銀が「ゼロ金利政策」をとったことに始まります。一時解除されましたが、再びゼロ金利政策に戻り、それだけでは足らず大幅な金融緩和、さらにはマイナス金利にまで進んでいます。バブル崩壊は日本の銀行経営にも大きな痛手となりました。銀行に公的資金が注入されることにもなりました。そして、人口減少で日本の金融市場の縮小が予想されることから、メガバンクは海外で稼ぐことが中心になっています。地方銀行は人口減少で地域経済が縮小し、経営が悪化してきています。日本国内では銀行は儲からない商売になってしまいました。日銀の緩和政策が長く続きすぎたことで、景気刺激策の面よりも銀行経営に与える影響が目立つようになってきているのです。

 

「働き方」は一番根野深い問題かもしれません。今回の記事にも「日本人の働き過ぎは江戸時代からの滅私奉公に遡る」とあります。バブル崩壊で企業の業績が悪化し、社員の採用を抑制。景気が悪いと仕事の難易度は上がります。しかも人数は増えず、仕事量も減らない。これが長時間労働の実態ではないでしょうか。誰も長時間労働をしたいわけではありませんが、そうせざるを得ない状況があるのです。しかも人口減少で働く人はますます減っていきます。労働生産性を上げなければ経済活動は縮小してしまいます。「働き方改革」は労働者に厳しい改革でもあるのです。

 

「GDP」は600兆円を目指す(※2016年の名目GDPは537兆円)のが昨年、政府がまとめた成長戦略です。バブル崩壊後、企業は「本業回帰」や「集中と選択」の名の下にリストラを進めました。デフレと人口減少で縮小する国内市場を前に、海外企業のM&A以外に成長戦略を見出せていない企業が増えてきています。高度経済成長期の人口ボーナスは今では「人口オーナス(重荷)」。低成長が続くと企業にとっても個人にとっても先行きの不安をなかなか払拭できません。少しでも高い成長目標をかかげて、そこに向って進んでいくことが、社会の活力を維持することになるのです。

 

わが国の経済成長の問題点は、人口減少で縮小する国内市場とバブルの崩壊で日本人が自信を失ったことが大きな原因ではないでしょうか。人口減少は簡単には止められませんが、失った自信は取り戻せるのでは、日本経済新聞で失った自信を取り戻しましょう。

日経お役立ちニュース17年5月18日配信のサムネイル

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